スーパーアイドル!平維盛-2【建礼門院右京大夫集あらすじマンガ】|平家物語

前回>のつづきです。
美しい平維盛の姿を見ながら、藤原実宗と右京大夫は・・・

『建礼門院右京大夫集』<6番・7番詞書>より


漫画は、原文を基にえこぶんこが脚色しています。

◆目次◆ ・「葵」と「逢う日」は鉄板ネタ!
・まだまだつづく、維盛・モテ伝説。


「葵」と「逢う日」は鉄板ネタ!

え?実宗さん?唐突に何が言いたいの?
って感じですが・・・

これは、賀茂祭〔葵祭〕の際に、葵をつけた鬘(かずら)を御簾などにかける、という風習にちなんで、
あふひ=葵(あおい)

あふひ=逢う日(男女が交際する)

かける=葵を掛ける

かける=願いをかける
の二つの掛詞を盛り込んでオシャレな和歌を詠んでみた、というだけのことです。

それに対する右京大夫の返歌も、この二つの掛詞を踏まえたものになっています。
よくある貴族社会の機知に富んだ戯れでした。

維盛にしたら
「俺のいないところで、ひとの容姿をネタに、なに遊んでんじゃい!」ってところでしょうが。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

この場面で、実宗〔6番〕・右京大夫〔7番〕が詠んだ和歌はこちら
〔6番〕
うらやまし 見と見る人の いかばかり なべてあふひを 心かくらむ

〔7番〕
なかなかに 花の姿は よそに見て あふひとまでは かけじとぞ思ふ


●現代語訳●
〔6番〕
うらやましいな。あの美しい維盛を見る女性は皆、(賀茂祭で葵をかけるように)、彼と逢う日〔恋人になる日〕を、どれほど心をかけて願っていることだろう。

〔7番〕
維盛さまの花のようなお姿は、かえって私などには関係のないものだとして、よそに眺めることにします。(賀茂の祭で葵をかけるように)逢う日〔恋人になる日〕を心にかけて願うなんてことは、しないでおこうと思います。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ただ最後には、実宗に、意外な深層心理を突かれた右京大夫さん。
結局、彼女が維盛をどう思っているかをまとめると・・・

超カッコイイ。とくに特別衣装のときなんて、ドキドキする!
でも、付き合うなんて、とんでもない。
ああいう人は、遠目で見てるのが一番。
まぁ、正直いうと、そりゃちょっとは付き合ってみたい気もするけどね!


・・・・・・つまり、アイドルってことでOK?




まだまだつづく、維盛・モテ伝説。

今回の話でも実宗が、維盛のモテっぷりをさらりと教えてくれていますが、当時、維盛はおそらく十七歳。

維盛モテ街道はこれからが本番です。

その頂点は、前回でも少し触れた、安元二年、法住寺殿で催された、後白河法皇五十の御賀での青海波舞
維盛、十八歳の春。

平家物語巻十には、このように書かれています。

知盛・重衡など平家一門の人々が着飾って垣代に立ったその中から、維盛が出て、桜の花を頭にさし、青海波を舞った。あでやかな花の姿、舞う袖が風にひるがえるその美しさは、地を照らし、天も輝くほどだった。
女房たちは、維盛のことを「深山木の中の桜梅」といって賛美した。


地を照らし、天も輝くほどの美しさですってよ…。
(;゚Д゚) !!!!!!!!

なんで、維盛が「光源氏の再来」とまで言われたかというと、きっかけは、この青海波舞です。
青海波舞といえば、『源氏物語』「紅葉賀」巻。桐壺帝の御前で光源氏と頭中将が青海波を舞う、名シーンです。

維盛の美しさ+青海波
こ、これは・・・源氏物語のアレだ、アレ!!

・・・と当時の人は、打ち震えたんでしょうね。
青海波を舞う平維盛、後白河法皇五十の御賀


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※参考文献/久保田淳氏校注『建礼門院右京大夫集・とはずがたり』新編日本古典文学全集、小学館/糸賀きみ江氏校注『建礼門院右京大夫集全注釈』講談社/梶原正昭氏・山下宏明氏校注『平家物語』新日本古典文学大系、岩波書店
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<これが平家の公達だ!編>
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<エピローグ>
■読み継がれる右京大夫集

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