平資盛、突然の訪れ。雪の朝の思い出 【建礼門院右京大夫集あらすじ漫画】 平家物語

実家でくつろいでいた右京大夫。雪の降り積もる庭を眺めて、ロマンチックな妄想をしていたら・・・? 
 
あらすじを漫画でどうぞ。
『建礼門院右京大夫集』<115番詞書>より



漫画は、原文を基にえこぶんこが脚色しています。

◆解説目次◆ ・登場人物
・ 服装大事!平安貴族の嗜み、かさねの色目
・雪のあしたはなほぞ恋しき

登場人物

平資盛(たいらの すけもり)
平清盛の長男(重盛)の次男。

右京大夫(うきょうのだいぶ)
中宮・徳子に仕える女房。

服装大事!平安貴族の嗜み、かさねの色目

突然の少女漫画展開ですみませんが、原文もけっこう少女漫画です。
雪の朝、ひとりで歌を呟いていると、突然現れた美しい恋人。
まるで絵巻物のようなドラマチックな場面ですね。

 さてこの話では、資盛の素敵な衣装に対し、自分のぱっとしない衣装を気にする描写があります。

平安時代の衣は袷(あわせ)仕立てなので、表の裂地と裏の裂地の色彩の調和にも心を配りました。(かさねの色目)

資盛の衣装は、 枯野の狩衣、蘇芳の衣、紫の指貫。
右京大夫の目には、 「いとなまめかしく見え」とても若々しく美しく見え)たそうです。

■枯野 (表ー黄、裏ー薄青)
野の面が雪・霜に逢って黄枯れてゆく、荒涼たる原の様を表した色目。
参考 :長崎盛輝氏『かさねの色目 平安の配彩美』 青幻舎 

まさに、右京大夫が眺めていた、雪が積もった荒れた庭にぴったりの服装ですね。
資盛は、なかなかのオシャレさんだったようです。


 対する右京大夫の衣装は、 薄柳の衣、紅梅の薄衣。
■薄柳(表ー白、裏ー淡青)
早春、猫柳の枝に芽生えた、白いうぶ毛の新芽の色。
■紅梅(表ー紅梅、裏ー蘇芳)
早春に花開く紅梅の色。

現代人には、これがどのくらいダサいのか、よくわかりませんが・・・。
(季節外れだった? 衣と薄衣の色が合わなかった?)

 自宅で適当な格好でくつろいでいたら、突然恋人がオシャレして現れたっていう感じでしょうか。そりゃ気後れしますよね。


雪のあしたはなほぞ恋しき。

右京大夫が詠んだ歌。
〔115番〕
年月の 積もり果てても その折の  雪のあしたは なほぞ恋しき

●現代語訳●
あれからずいぶん歳月はたったけれど、あの時の雪の朝のことは、やはり今でも恋しく思い出されます。

この歌は、この雪の日に詠んだ歌ではなく、後になってから当時を思い出して詠んだ、右京大夫の独白です。

年月が積もったことと、雪が積もっていたことを重ねて、もう今はいない資盛をいつまでも忘れられない自分のことを、詠んでいます。

 詞書には、
歳月多く積もりぬれど、心には近きも、かへすがへすむつかし 」(あれから歳月はたいぶ経ったのに、心には昨日のことのように思い出されるのも、本当に困ってしまう) とあります。

右京大夫は、雪が降るたびに、この日の資盛のことを思い出さずにはいられなかったんでしょうね。

建礼門院右京大夫集の平資盛と右京大夫。年月の積もりはててもその折の雪のあしたははほぞ恋しき


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※参考文献/久保田淳氏校注『建礼門院右京大夫集・とはずがたり』新編日本古典文学全集、小学館/糸賀きみ江氏校注『建礼門院右京大夫集全注釈』講談社/梶原正昭氏・山下宏明氏校注『平家物語』新日本古典文学大系、岩波書店

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