五節の櫛!平宗盛からのプレゼント。【建礼門院右京大夫集あらすじマンガ】|平家物語

またまた平家の大物登場!平宗盛から右京大夫にプレゼント?

あらすじを漫画でどうぞ。
『建礼門院右京大夫集』<59~60番詞書>より 
平宗盛
漫画は、原文を基にえこぶんこが脚色しています。

◆解説目次◆ ・登場人物
・五節の櫛は友チョコ?
・平家最期の総帥・平宗盛

登場人物

平宗盛 たいらのむねもり
平清盛の三男。(時子の子の中では長男)

右京大夫 うきょうのだいぶ
中宮・平徳子に仕える女房。

五節の櫛は友チョコ?

おい、右京大夫。 
と思わずツッコミたくなりますが、二人は別にあやしい仲ではありません。

当時、五節(新嘗祭・大嘗祭に行われた行事)の頃に、親しい人の間で櫛を贈答する、という習慣があったようです。
今でいうバレンタインデー(ホワイトデー?)みたいなものでしょうか。

何やら意味深な贈答をしていますが、この二人に恋愛感情があったわけではなくて、よくある貴族の社交辞令だったようです。 友チョコですね。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

だいたい、こういう意味深な和歌をもらったら、女性側は
 「そんな調子のいいことを言って、どうせすぐに忘れちゃうんでしょう?」
 とか
 「どうせほかの人にも、おんなじようなこと言ってるんでしょう?」
みたいなツンデレ対応をするのが定番ですが(重衡のときみたいに・・・)、

ここは右京大夫は、素直な歌を返していますね。
やはり、相手が中宮さまの同母長兄・中納言ですから、失礼のないようにしたんでしょうか。
右京大夫の交友関係の広さにはびっくりしますね。
それにしても、後に平家の総帥になる宗盛も、女子とこんなオシャレなやりとりをする人だったんですね。意外です。
平家物語で、苦労している姿しか知らない・・・





平家最後の総帥・平宗盛

平宗盛は、清盛の三男。時子の子の中では長子です。

治承五年(1181)宗盛は、五畿内および伊賀・伊勢・近江・丹波の九ヶ国の惣官に就任。合法的に兵を動員できる実質の国家の軍事トップに立ちます。清盛の没後は、惣官として追討使の派遣を指揮しつつ、後白河院や他の公卿との調整に奔走しました。


 平家を立て直せず滅亡に導いた凡庸な総帥として『平家物語』などでは描かれ、異母兄・重盛と比べられることもあるのですが、重盛は、清盛より先に亡くなっています。
重盛は、総帥となってからも、後白河院に無理難題を命じられた時には、「福原にいる清盛に聞かないと動けません」という手を使うことができました。

宗盛の場合、条件が違います。
高倉院が崩御し、清盛が他界し、宗盛は既に詰んでる状態の平家の舵取りを一身に背負うことになった訳ですから。

宗盛は、清盛の没後、二日後には早々に次のようなことを後白河院に申し入れています。
「故入道所行等、雖有不叶愚意之事等、不能諫争、只守彼命、所罷過也、於今者、万事偏以院宣之趣、可存行候」

 「故入道(父・平清盛)が行ったことは、自分の考えに合わないことがあっても、強く諫めることはできませんでした。ただ父の命令を守るだけで、これまで過ごしてきました。現在においては、すべて仰せの通りに従っていく所存です。
(『玉葉』治承5年閏2月6日条)

早々に後白河院への恭順姿勢を示した宗盛でしたが、

治承5年閏2月6日、院御所議定で源氏に和平の使者を派遣する方針が決定したにも関わらず、宗盛は武力による追討を主張します。

治承5年8月には、頼朝から後白河院に対して、「自分には謀反の心はなく、昔のように源氏平氏相並んで仕えたい」という、和平の提案が上奏されますが、
宗盛は、下記の清盛の遺言を理由に拒否します。

我子孫、雖一人生存者、可曝骸於頼朝之前

我が子孫、最後の一人になっても、骸を頼朝の前に晒せ
(『玉葉』治承5年8月1日条)

平家にとって不都合だったのは、
頼朝の反乱の動機が朝廷を倒そうとするものではなく、平家に対抗するものである以上、後白河院にとって、必ずしも源氏は追討すべき対象ではなかったことです。

宗盛は、後白河院への恭順姿勢を示しつつも、平家の軍事的地位を失うわけにはいかない、という難しい立場に立たされたのです。

こうして平家は、追討使による源氏追討路線を継続しますが、
寿永2年、倶利伽羅峠の戦い・篠原の戦いで木曽義仲に大敗。

都落ちの際には後白河院に脱出されるという致命的な失策を犯し、賊軍として追われる立場に成り下がってしまうのでした。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

平家存続の為に政治的に奔走した宗盛でしたが、
戦場での華々しい活躍ではなかった為、『平家物語』では、弟の知盛・重衡がカッコよく描かれる中、宗盛は情けない怯懦キャラになってしまっています。


以降、宗盛にはこの凡庸・怯懦キャラの影がつきまとうことになります。 


次回はコラムです。


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※参考文献/久保田淳氏『建礼門院右京大夫集・とはずがたり』新編日本古典文学全集、小学館/糸賀きみ江氏『建礼門院右京大夫集全注釈』講談社学術文庫、講談社/梶原正昭氏・山下宏明氏『平家物語』新日本古典文学大系、岩波書店/『玉葉』国書刊行会/田中文英氏『平氏政権の研究』思文閣出版、1994
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