どういうつもり⁈ 藤原隆信の横恋慕 2【建礼門院右京大夫集あらすじマンガ】|平家物語

尼君の庵での出会いをきっかけに、藤原隆信から熱心な和歌が届くようになりました。気丈につっぱねていた右京大夫でしたが・・・。

あらすじを漫画でどうぞ。
『建礼門院右京大夫集』<136~141番詞書>より
漫画は、原文を基にえこぶんこが脚色しています。

◆解説目次◆ ・登場人物
・攻める隆信、守・・・れるか右京大夫!
・大人の余裕?!隆信と資盛、その差二十歳!

登場人物

藤原隆信 ふじわらのたかのぶ
歌人。似絵の名手。

右京大夫 うきょうのだいぶ
中宮・徳子に仕える女房。

攻める隆信、守・・・れるか右京大夫!


・・・右京大夫!隆信の術中に嵌っていますよ!

はじめに隆信が詠んだ歌。
〔136番〕
思ひ分く かたもなぎさに 寄る波の いとかく袖を 濡らすべしやは

●現代語訳●
区別する干潟もないままに、渚に寄る波がかかって
(分別する方法もないまま、あなたに心を寄せて、そのために流す涙で)
こんなに袖を濡らしています。いつまで私を悲しませるのでしょうか。

なかなか技巧を凝らしています。
■かた  方と潟の の掛詞。
■なぎさ 無きと渚の掛詞
■かく  斯くと掛くの掛詞
■潟・渚・寄る・波・掛く・濡らす縁語

これに対しては、右京大夫はピシャリとつっぱねる和歌を返しているのですけどね。
問題は、次です、次。


〔140番〕隆信
うらやまし いかなる風の なさけにて 焚く藻のけぶり うちなびきけむ

〔141番〕右京大夫
消えぬべき けぶりの末は 浦風に なびきもせずて ただよふものを

●現代語訳●
〔140番〕
うらやましいな。いったいどんな風で、焚く藻の煙はなびいたのでしょう。
(どんな男性の情けによって、あなたはなびいたのでしょう)

〔141番〕
今にも消えてしまいそうな焚く藻の煙の末は、浦風になびきもしないで、空に漂っておりますのに。
(心細い私は、誰にも従いもしないで、身を寄せる人もないのに、なびいたなどと言うなんてひどい)

■うらやまし「浦」と「羨まし」 の掛詞。
■焚く藻のけぶり 藻塩草を焚く煙。煙が風になびくのは、女性が他の男性になびくことのたとえに使われる。

・・・ここで、資盛のことを持ち出すか、隆信さん。

右京大夫、焦ったか。この返歌はきわどい。

資盛との仲は公にできなかったからかもしれませんが、右京大夫の返歌は、かえって隆信に期待をもたせる内容になってしまっていますね。

それにしても隆信は、資盛との仲を知ったうえで、口説いているのですから、なかなかの曲者です。自信があったのでしょうか・・・。




大人の余裕?!隆信と資盛、その差二十歳!!


藤原隆信は、1141年生まれ
右京大夫は、推定1152〜1157年生まれ
平資盛は、1161年生まれ(異説あり)

ということは、 隆信は、右京大夫より10歳以上年上です。
(この時、既に三十代半ばですね)
 隆信と資盛とは20歳も違うのですから、なんというかもう別次元ですね。

若い資盛は、初めこそ熱心に言い寄ってきましたが、その後はこまめに気を使ったりはしてくれません。 恋人ゆえの気安さからか、些細なことで口論になったこともあったようですから〔200番詞書〕、逐一優しくしてくれるタイプではないですね、たぶん。
(妄想ですけどね)

 一方、隆信は、大人の余裕を醸し、嬉しくなるような言葉を畳み掛けるように言い寄ってきます。右京大夫がいつのまにか絆されていったとしても・・・

しょうがない気がしますね。

どうなる、右京大夫!次回につづきます。


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※参考文献/『建礼門院右京大夫集・とはずがたり』新編日本古典文学全集(小学館)久保田淳氏/『建礼門院右京大夫集全注釈』(講談社)糸賀きみ江氏/『平家物語』新日本古典文学大系(岩波書店)梶原正昭氏・山下宏明氏
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<プロローグ>
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<これが平家の公達だ!編>
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■どういうつもり!藤原隆信の横恋慕 1
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<エピローグ>
■読み継がれる右京大夫集

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