唯一の弱点?!平維盛の恋愛問題 1【建礼門院右京大夫集あらすじマンガ】|平家物語

完璧貴公子・平維盛には、意外な弱点があった?
あらすじを漫画でどうぞ。
『建礼門院右京大夫集』<187~192番詞書>より 

平維盛、維盛の和歌、平家物語、建礼門院右京大夫集
漫画は次回につづきます。
漫画は、原文を基にえこぶんこが脚色しています。

◆解説目次◆ ・登場人物
・この女性、だれなの?!
・藤原成親って、あの事件の人?

登場人物

右京大夫 うきょうのだいぶ
中宮・平徳子に仕える女房。

平維盛 たいらのこれもり
権亮少将。(= 中宮権亮 兼 近衛少将)
平清盛の長男〔重盛〕の長男。


この女性、だれなの?!

スーパーアイドル・平維盛の心を射止めたこの女性……一体、誰?!
『右京大夫集』には、まったく詳細は書かれていません。

ですが、実はこの女性こそ、維盛の正妻・建春門院新大納言局なのでないかという説があります。

…え?奥さん?


※維盛の妻が、建春門院新大納言局と呼ばれるのは、彼女が建春門院(平滋子)に仕えていたことに由来します。(『たまきはる』)
建春門院が崩御した後(安元二年七月以降)、中宮徳子に仕えたのではないかという説です。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

建春門院新大納言局は、藤原成親(ふじわらのなりちか)の娘。
なお、藤原成親の妹が、平重盛(維盛の父)の妻です。でも、維盛の母ではありません・・・(ややこし)

成親の家系は、善勝寺流と呼ばれる院の近臣で、清盛の祖父・正盛の時代から平家とは持ちつ持たれつの協力関係にありました。
重盛もその流れを汲み、自身は成親の妹(経子)を正妻にし、子の維盛清経にも成親の娘と結婚させています。


こうした重盛と成親の関係を考えると、維盛と新大納言局の結婚は、どうみても政略結婚ですよね。
それがもし、こんな風な恋仲を経ていたとしたら・・・、それはときめきますね。

維盛には、平家物語の描写から愛妻家のイメージがありますので、もしそうなら個人的には嬉しい。

(なお、「延慶本」「長門本」「源平盛衰記」等の読み本系の『平家物語』には、維盛と新大納言局の恋物語が収録されています。)
※維盛と妻については、えこぶんこ2で詳しく解説しています。よろしければこちらをどうぞ!
(別ウィンドウが開きます)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

・・・・・ん?いや、まてよ?

ここで気になることが一つ。
『平家物語』では、維盛と新大納言局って、1173年に結婚して長男・六代が生まれたことになっています。
一方、右京大夫が宮仕えしていたのは、1173~1178年。

・・・これって、いつの話だ???

右京大夫は、「忍びて心交わして」(こっそり心を通わせて)・・・と書いています。
相手が正妻なら忍ばなくていいのでは?

やはりこの彼女は、正妻とは違う女性なのか。
詳細が書かれていない以上、結局わかりません。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 

ただ、右京大夫と新大納言局は、ずっと和歌を送りあうほどの仲良しです。[90番・91番]
時系列はわかりませんが、彼女が他の女性と維盛との仲を取り持つとは考えるよりは、えこぶんこ的には、やっぱり新大納言局説、を推したいと思います。



藤原成親って、あの事件の人。

新大納言局の父・藤原成親は、安元三年(1177)『鹿ケ谷事件』で処刑されてしまう人物。

それ以降、成親と関係の深い重盛一家(屋敷のある地名から小松家と呼ばれます)は、平家一門の中でビミョーな立場に立たされることになります。



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※参考文献/久保田淳氏『建礼門院右京大夫集・とはずがたり』新編日本古典文学全集(小学館)/糸賀きみ江氏『建礼門院右京大夫集全注釈』(講談社)/梶原正昭氏・山下宏明氏『平家物語』新日本古典文学大系(岩波書店)
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【建礼門院右京大夫集あらすじマンガ】
<プロローグ>
■建礼門院右京大夫集ってどんなお話? 1

<これが平家の公達だ!編>
■スーパーアイドル!平維盛 1
■唯一の弱点?!維盛の恋愛問題 1
■平家のムードメーカー!平重衡
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■右近の橘!雪の資盛

<宮中エピソード編>
■内裏近き火事。頼もしい平重盛
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<再出仕編>
■後鳥羽天皇に仕える
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<エピローグ>
■読み継がれる右京大夫集

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