壇ノ浦の戦い!|平資盛は入水したのか?生存説も?【建礼門院右京大夫集あらすじマンガ】


寿永四年3月24日。長門国壇ノ浦にて、ついに平家は最期の時を迎えます。
あらすじを漫画でどうぞ。

『建礼門院右京大夫集』<223歌詞書>より
壇ノ浦の戦い壇の浦の戦いマンガ
漫画は、原文を基にえこぶんこが脚色しています。

◆解説目次◆ ・登場人物
・壇ノ浦の戦い
・かかる夢見ぬ人やいひけむ
・資盛は入水したのか?

登場人物

右京大夫(うきょうのだいぶ)
平徳子(建礼門院)に仕えていた女房。現在は退職。

平資盛(たいらのすけもり)
清盛の長男[重盛]の次男。右京大夫の恋人。

壇ノ浦の戦い

寿永4年3月24日、正午ごろ、壇ノ浦の戦いが始まりました。

戦力は、
『平家物語』によれば、義経軍3000余艘平家軍1000余艘
『吾妻鏡』によれば、義経軍840余艘平家軍500余艘
実際には、『吾妻鏡』の記述よりもっと少なかったのではないかとも考えられています。

初めは平家方が押していましたが、四国の水軍を率いる阿波重能が寝返ったのをはじめ、四国・九州の在地武士が平家を次々と裏切り、鎌倉方に味方したことで、戦局は決定的になりました。

午後四時には、平家の敗北が決定。

覚一本『平家物語』では、教盛知盛教経経盛は入水。
資盛は、弟の有盛と従兄弟の行盛とともに手を取り合って入水したとされています。

小松の新三位中将資盛、同少将有盛、いとこの左馬頭行盛、手に手をとりくんで、一所に沈み給ひけり
(覚一本『平家物語』巻十「能登殿最期」)

長門本では、もっと哀しい感じ。
小松御子息、新三位中将資盛、左少将有盛、わかくいとけなき人々の、弓をさしちかへ、手をとりくみて、抱合て、一所に入給ふ。
(長門本『平家物語』巻十八「内侍所の事」)


宗盛清宗親子、時忠は生け捕られ、
建礼門院徳子と高倉天皇第二皇子守貞親王は保護されましたが、安徳天皇は、時子に抱えられて入水。

朝廷が取り戻そうとしていた三種の神器のうち、神鏡と神璽は回収されましたが、宝剣は海底から見つかることはありませんでした。


かかる夢見ぬ 人やいひけむ

資盛を失った右京大夫の嘆きや苦しみは、223歌によく表されています。

なべて世の はかなきことを かなしとは かかる夢見ぬ 人やいひけむ

【訳】

世の中の「悲しい」という言葉は、このような悪夢のような経験をしたことがない人が言った言葉なんだろうか。(とてもそんな言葉で言い表せるようなものではない)

資盛の生年には諸説あるのですが、
応保元年(1161)だとすれば、このとき彼はまだ数え年で25歳。※職事補任
保元三年(1158)だとしても、まだ28歳です。※平家物語

右京大夫集には、平和な日常の中で冗談を言っては笑い合う、等身大の平家の人々の姿が描かれてきました。

軍記物である『平家物語』とは異なり、寿永二年以降も合戦のことには直接触れず、ただ、大切な人達が次々と失われていく絶望感だけが綴られていきます。

合戦とは決して美化されるものではない。ただただ悲惨なものである、ということを、彼女は伝えているように思えます。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ところで、『右京大夫集』は、まだここでは終わりません。
悲しみに打ちのめされても、彼女は自暴自棄にはなりませんでした。

やがて、少しずつ正気を取り戻した彼女は、自分なりの方法で資盛の供養につとめます。また、大原の建礼門院(徳子)を尋ねることなどもしています。

彼女は世を棄てることを選ばず、やがて、後鳥羽天皇施政下の宮中に再出仕します。
資盛への想いを抱えながら、次の時代を生き抜くのです。


資盛は壇ノ浦で入水したのか?

『平家物語』『吾妻鏡』『建礼門院右京大夫集』が、揃って壇ノ浦での資盛の入水を語る中、同時代の史料である『醍醐雑事記』の中に見える戦死・捕虜の中に資盛の名がないことから、反証の余地がないこともないのです。

『玉葉』寿永3年2月19日条には、資盛と家人の平貞能が、豊後の住人に生け捕られた(投降した)という風聞が記されています。

又聞、資盛貞能等、為豊後住人等乍生被取了云々、此説、日来雖風聞、人不信受之処、事已実説云々、

また、聞くところでは、資盛貞能が豊後の住人によって生け捕られたという。この話はこのところ噂されていたといっても人々は信じていなかったが、実説だという。
(『玉葉』寿永3年2月19日条

『平家物語』とは全然話が違ってきますが、
都落ちやその後の資盛の動向(※)を踏まえると、九州の時点で投降したというのも割とありえる話なんだそうです。

※資盛は、都落ちの時点で、後白河院へ帰降する意思があった(『吉記』『愚管抄』)
※大宰府で、資盛が緒方惟栄との折衝役を務めているのは、和平交渉に臨んでいたという説がある。
※資盛は、後白河院に帰洛を願う手紙を出している。(『玉葉』)
※資盛の腹心の家人・平貞能は、九州の時点で平家から離脱している。(『玉葉』)
※清経が入水、維盛・忠房が屋島から離脱しているように、小松家は既に平家主流とは決別していた可能性がある

うーん…。
もしも、豊後で投降したという風聞が事実だったとしたら、資盛は三草山の戦いにも屋島にも、もちろん壇ノ浦にもいなかったことになりますね。
(じゃあ『右京大夫集』にあったアレコレはどうなるんだろう…。)

今となっては、どれが真実かを確かめることはできませんが、
平家の公達の動向には、当時から誤聞を含め様々な情報が錯綜していたことから、色々と検証する余地があるのですね。

平資盛の豊後での投降説については、えこぶんこ2で詳しく紹介しています。
(別ウィンドウが開きます。)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ところで、延慶本『平家物語』・四部合戦状本『平家物語』では、資盛の最期が描かれるものの、兄弟と一緒に入水したのではなく、敵に囲まれてからの自害となっています。

新三位中将資盛は、敵に被取籠ける所にて自害して失給ぬ
(新三位中将資盛は、敵に取り囲まれたところで、自害して亡くなった。)
(延慶本『平家物語』十五「壇浦合戦事 付平家滅事」)

新三位中将資盛は、生け執り奉らんと欲しけるに、腹舁き切りて死にたまひぬ。
(新三位中将資盛は、生け捕りし申そうとしたところで、腹をかき切って亡くなった。)
(四部合戦状本『平家物語』十一「平家人々入水」)

延慶本の方が『平家物語』の古態と言われていますので、有盛・行盛と手を取り合って海に沈んだという最期は、物語として美しく描き直されたものかもしれないですね。

資盛が戦死していたのだとしたら、取り囲まれてからの自害はあまりにも悲愴なので、せめて最期は覚一本のように、残された兄弟(従兄弟)と手を取り合っていて欲しいな…と思います。

壇ノ浦の戦い、平資盛と平有盛と平行盛


 
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※参考文献/『校訂延慶本平家物語』汲古書院/『長門本平家物語』勉誠出版/『平家物語』新日本古典文学大系、岩波書店/『訓読四部合戦状本平家物語』/『平家物語大事典』東京書籍/『平家物語図典』小学館/『建礼門院右京大夫集・とはずがたり』新編日本古典文学全集、小学館/川合康氏『源平の内乱と公武政権』吉川弘文館/高橋昌明氏『平家の群像』(岩波新書)岩波書店、/上横手雅敬氏『平家物語の虚構と真実』(塙新書)塙書房

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【建礼門院右京大夫集あらすじマンガ】
<プロローグ>
■建礼門院右京大夫集ってどんなお話? 1

<これが平家の公達だ!編>
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■平家のムードメーカー!平重衡
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<宮中エピソード編>
■内裏近き火事。頼もしい平重盛
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■五節の櫛!平宗盛のプレゼント

<隆信との恋編>
■どういうつもり!藤原隆信の横恋慕 1
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■資盛との再会■枯れたる花
■寿永二年■倶利伽羅峠の惨敗!
■平家都落■資盛、最後の願い
■資盛と右京大夫、今生の別れ!
■六波羅と西八条■大宰府落ち
■戦地の資盛の夢を見る
■梅の花と資盛■一の谷の合戦
■重衡の生け捕り■維盛の入水
■屋島の資盛へ手紙を
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■壇ノ浦の戦い! ■壇ノ浦の戦後処理

<追憶の旅編>
■北山の思い出
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■波の底の資盛に■星合の空

<再出仕編>
■後鳥羽天皇に仕える
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■藤原隆房、藤原公経との贈答
■藤原俊成九十の賀に

<エピローグ>
■読み継がれる右京大夫集

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