右近の橘!雪の平資盛 【建礼門院右京大夫集あらすじマンガ】|おひなさま豆知識
内裏に雪が降り積もった朝、たたずむ恋人・資盛。手に持っていたのは・・・?
『建礼門院右京大夫集』<248番詞書>より
平資盛 たいらのすけもり
平清盛の長男〔重盛〕の次男。右京大夫の恋人。
右京大夫 うきょうのだいぶ
中宮・平徳子に仕える女房。
久しぶりの登場、恋人・資盛との美しいお話です。
宮中儀式の際、右近衛府の官人は、紫宸殿の前庭にある橘の木(右近の橘)の近くに控えます。
というわけで、右近衛権少将だった資盛は、橘の木にゆかりを感じて、雪のついたままの枝を折り取って佇んでいたらしい。
(さすがに紫宸殿前の「右近の橘」では恐れ多いので、折ったのは別の木でしょうけど)
もし人目を意識せず、これをやっていたのなら、資盛はなかなかのロマンチストさんですね。 もしくは、右近衛府大好きな、仕事人間かどっちかだ。
ところで、右近の橘と聞いて思い浮かぶのは、「おひなさま」かもしれません。
向かって右に桜の木、左に橘の木を飾ります。
・・・左右逆じゃね?
ってなりますが、お内裏様から見たら、左が桜で右が橘だからいいんです。
これは、実際の内裏の庭にも、紫宸殿から見て、左側に桜の木が、右側に橘の木が植えられていたことに由来します。
宮中儀式の際には、桜の近くには左近衛府の官人が、橘の近くには右近衛府の官人が陣を敷いたので、「左近の桜」「右近の橘」と呼ばれました。
さて、お雛様で桜と橘の上に飾られるのは、武官姿の老人と若者。
通称 「左大臣」「右大臣」と呼ばれていますが、実際には大臣クラスになると武官の格好はしませんので、ほんとは大臣ではありません。
そのため 「随身」とも呼ばれていますが、黒の袍(四位以上)、緋の袍(五位)を着ていることから、身分の低い随身ではなく、近衛府の幹部じゃないかとも言われています。
この老人と若者が近衛府の役人なら、橘と桜の側にいるのがぴったり合いますね。
ちなみに漫画では、いつも資盛だけ緋の袍を着ていますが、これはこの時点で資盛だけ位が五位だからです。 (この時代の身分制度はロコツです・・・。)
ところで、今回の話では資盛は冬の直衣(のうし)を着ています。
直衣は私服なので、原則は直衣での参内はできませんが、宿直(とのい=夜勤)の時か、もしくは勅許を受けた者は、直衣での参内が許されたようです。
この日の資盛は、「宿直姿の萎ばめる直衣」(宿直姿のいくぶんしわになった直衣)だったとのこと。
朝の時点で既にしわしわだったということは、夜勤明けだったのかもしれませんね。
(さらに余談ですが、史料では資盛が右近権少将に任官されたのは1178年12月で(『公卿補任』)、右京大夫が宮中にいた頃とは時系列が合わないのですが、漫画では原文に従いました。)
雪の資盛が好きですね、右京大夫さん。
やはり、はかなく消える雪と、資盛を重ね合わせてしまうのでしょう 。
前回は実家でしたが、今回は宮中です。
この歌も、資盛が亡くなった後で、往時を偲んで詠んだ歌です。
橘の木に雪が積もっているのを見て、
「わが立ちならす方の木なれば、契りなつかしくて」と言ひし折、ただ今と覚えて、悲しきことぞ言ふ方なき」
(「私が立つことに慣れている方の木だから、縁があると思って」と資盛が言ったことが、たった今のように思い出されて、悲しさは言いようがない。 )
忘れられませんよね・・・。
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あらすじを漫画でどうぞ。
『建礼門院右京大夫集』<248番詞書>より
漫画は、原文を基にえこぶんこが脚色しています。
登場人物
平清盛の長男〔重盛〕の次男。右京大夫の恋人。
右京大夫 うきょうのだいぶ
中宮・平徳子に仕える女房。
左近の桜、右近の橘! おひなさま豆知識
久しぶりの登場、恋人・資盛との美しいお話です。
宮中儀式の際、右近衛府の官人は、紫宸殿の前庭にある橘の木(右近の橘)の近くに控えます。
というわけで、右近衛権少将だった資盛は、橘の木にゆかりを感じて、雪のついたままの枝を折り取って佇んでいたらしい。
(さすがに紫宸殿前の「右近の橘」では恐れ多いので、折ったのは別の木でしょうけど)
もし人目を意識せず、これをやっていたのなら、資盛はなかなかのロマンチストさんですね。 もしくは、右近衛府大好きな、仕事人間かどっちかだ。
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ところで、右近の橘と聞いて思い浮かぶのは、「おひなさま」かもしれません。
向かって右に桜の木、左に橘の木を飾ります。
ってなりますが、お内裏様から見たら、左が桜で右が橘だからいいんです。
これは、実際の内裏の庭にも、紫宸殿から見て、左側に桜の木が、右側に橘の木が植えられていたことに由来します。
参考:「源氏物語図典」(小学館)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
さて、お雛様で桜と橘の上に飾られるのは、武官姿の老人と若者。
通称 「左大臣」「右大臣」と呼ばれていますが、実際には大臣クラスになると武官の格好はしませんので、ほんとは大臣ではありません。
そのため 「随身」とも呼ばれていますが、黒の袍(四位以上)、緋の袍(五位)を着ていることから、身分の低い随身ではなく、近衛府の幹部じゃないかとも言われています。
この老人と若者が近衛府の役人なら、橘と桜の側にいるのがぴったり合いますね。
ちなみに漫画では、いつも資盛だけ緋の袍を着ていますが、これはこの時点で資盛だけ位が五位だからです。 (この時代の身分制度はロコツです・・・。)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ところで、今回の話では資盛は冬の直衣(のうし)を着ています。
直衣は私服なので、原則は直衣での参内はできませんが、宿直(とのい=夜勤)の時か、もしくは勅許を受けた者は、直衣での参内が許されたようです。
この日の資盛は、「宿直姿の萎ばめる直衣」(宿直姿のいくぶんしわになった直衣)だったとのこと。
朝の時点で既にしわしわだったということは、夜勤明けだったのかもしれませんね。
雪と消えにし、人や恋ふらむ
雪の資盛が好きですね、右京大夫さん。
やはり、はかなく消える雪と、資盛を重ね合わせてしまうのでしょう 。
前回は実家でしたが、今回は宮中です。
〔248番〕
たちなれし 御垣の内の たちばなも 雪と消えにし 人や恋ふらむ
●現代語訳●
あの人が立ちなれ親しんだ内裏の橘も、この降る雪のように消えたあの人を恋しがっているだろうか
たちなれし 御垣の内の たちばなも 雪と消えにし 人や恋ふらむ
●現代語訳●
あの人が立ちなれ親しんだ内裏の橘も、この降る雪のように消えたあの人を恋しがっているだろうか
この歌も、資盛が亡くなった後で、往時を偲んで詠んだ歌です。
橘の木に雪が積もっているのを見て、
「わが立ちならす方の木なれば、契りなつかしくて」と言ひし折、ただ今と覚えて、悲しきことぞ言ふ方なき」
(「私が立つことに慣れている方の木だから、縁があると思って」と資盛が言ったことが、たった今のように思い出されて、悲しさは言いようがない。 )
忘れられませんよね・・・。
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