平資盛と右京大夫、今生の別れ!【建礼門院右京大夫集あらすじマンガ】|現代語訳


ついに、資盛と右京大夫、今生の別れのとき。戦地に赴く資盛の心の内には、悲愴な覚悟があった。
あらすじを漫画でどうぞ。
『建礼門院右京大夫集』<205番詞書>より

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漫画は、原文を基にえこぶんこが脚色しています。
◆解説目次◆ ・登場人物
・寿永元暦の夢まぼろし
・戦地へ向かう資盛の葛藤 

登場人物

平資盛(たいらのすけもり)
清盛の長男[重盛]の次男。右京大夫の恋人。

右京大夫(うきょうのだいぶ)
中宮・徳子に仕える女房。現在は退職。

寿永元暦の夢まぼろし

この段は、下手な解説より、ぜひ原文を味わってみてください。
原文のクオリティがすごいので! 

205番詞書は、今までの明るく平和な雰囲気から一転、戦乱の悲劇を語る次の名文で始まります。

●原文●
寿永元暦などのころの世の騒ぎは、夢ともまぼろしとも、あはれとも何とも、すべてすべて言ふべき際にもなかりしかば、よろづいかなりしとだに思ひ分かれず、なかなか思ひも出でじとのみぞ、今までも覚ゆる

●現代語訳●
寿永・元暦のころの世の中の騒乱は、夢とも幻とも、悲しいとも何とも、言葉で表すことのできるようなものではなかったので、万事どうであったということさえ私には判別することができず、いっそのこと思い出すまいとばかり、今に至るまで思われます
※原文は、『新編全集』(小学館)より抜粋

ここから、かつて華やかな宮中で交流しあった平家の公達たちの悲劇が始まります。

清経経正忠度重衡維盛・・・・ そして、資盛

今まで、宮中での明るく優しい彼らの姿を読んできただけに、読み進めるのが辛くなりますね。


戦地へ向かう資盛の葛藤

『右京大夫集』の中で、都落ち以前の資盛の描写は、意外にもそれほど多くはないのですが(むしろ維盛の方が多いくらい)、
205番詞書で資盛は、戦乱に臨む悲愴な覚悟を長文で切々と語ります。 (上の漫画のシーンです)

 こちらも、是非原文でどうぞ。

●原文●
(資盛の言葉)
 「かかる世の騒ぎになりぬれば、はかなき数にただいまにてもならむことは、疑ひなきことなり。

(中略) 
また、もし命たとひ今しばしなどありとも、すべて今は心を昔の身とは思はじと、思ひしたためてなむある。 そのゆゑは、ものをあはれとも、何のなごり、その人のことなど思ひ立ちなば、思ふ限りも及ぶまじ。 心弱さも、いかなるべしと身ながら覚えねば、何事も想ひ捨てて
(中略)
よろづただ今より、身を変えたる身と思ひなりぬるを、なほともすればもとの心になりぬべきなむ、いとくちをしき」

●現代語訳●
(資盛の言葉)
「このような騒乱の世になったのだから、今にでも私が亡き人の数の中に入るのは間違いないことです。

また、もしたとえ今しばらく生きていたとしても、いっさい今は昔のままの自分とは思うまいと、心に固く決心しています。そのわけは、悲しいとか、名残が惜しいとか、誰かのことを思い始めたりしたら、とても際限ないからです。心弱さもどうなるか我ながらわからないので、これからは何も考えないことにして、

たった今から、もうこの世に生きている身ではないと思うようにしたのですが、やはりともすれば元の心に戻ってしまいそうなのが、残念です。」

資盛は、彼女の前で、決してカッコつけたりしていませんね。 心弱さを情けない、と思っていると正直に話しています。

等身大の、一人の青年の苦渋が、手に取るように伝わってきて辛いですね。

 『平家物語』などで「大将軍、小松新三位中将資盛、其勢三千騎・・・」(三草合戦)とか言われてしまうと、見落としそうになる部分です。

『平家物語』で大将軍として描写されている彼らも、『右京大夫集』を読んでいると、私たちと同じひとりの人間で、恋をしたり、苦悩したりしていたことがわかります。
決して、意気揚々と戦場に向かっていったわけではないことも伝わってきますね。

このとき資盛はまだ、23歳(満21〜22歳)です

これが、右京大夫と資盛の今生の別れとなりました。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

寿永二年は、まだまだ滅亡への序章に過ぎません。いよいよここから、一ノ谷の戦い、屋島の戦い、といった源平の合戦が始まります。 コラムを挟んで、次回に続きます。



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※参考文献/久保田淳氏『建礼門院右京大夫集・とはずがたり』新編日本古典文学全集、小学館/糸賀きみ江氏『建礼門院右京大夫集全注釈』講談社/

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