『平家物語』おすすめ本 7選!【原文・現代語訳・新書・古典・小説・漫画】
今回はコラムです。
『平家物語』を楽しむためのオススメ本を紹介します!
大の平家ファン・えこぶんこが、ガチで面白いと思った本ばかりを厳選しました。
新版 平家物語(四) 全訳注 (講談社学術文庫)
古文ファンの愛読書、講談社学術文庫です。 底本は覚一本。
図書館で分厚い全集を借りなくても、原文と現代語訳が文庫で通勤時間に読めるなんて、なんと贅沢で有り難いシリーズだろう。
古文にあまり馴染みがないという方にも原文・現代語訳はオススメできます。 なぜなら『平家物語』(覚一本)は、そんなに難解ではないからです。
例えば、平安中期の王朝文学などは、主語がなくて誰がしゃべってるのかわからなくなったりしますが・・・(私はそうなる)
『平家物語』(覚一本)は、ちゃんと主語もセリフもわかるし、ストーリーも明快。キャラがそれぞれ立っていて、現代の小説を読んでいるのと変わらない感覚で、感情移入できます。
数ある『平家物語』諸本のうち、覚一本は、南北朝時代、当時の琵琶法師のトップである明石覚一が弟子たちの為にまとめた本。諸本中、最も文芸的に優れているといわれ、物語として洗練されているので、現代人にも読みやすい本となっています。
とはいえ結構な長さですから、面白そうな巻から読むのもいい手だと思います。
■『吉村昭の平家物語』吉村昭氏 訳(講談社文庫)
吉村昭の平家物語 (講談社文庫)
もっと簡潔に現代語訳を読みたい、という方にオススメ。
といってもダイジェスト版ではなく、ほぼ全体が収録されているので、ストーリーがぶつ切りになることはありません。
平家物語には、仏教説話めいた部分や、話が逸れる部分が結構ありますので、それらを徹底的にカットし、主軸のストーリーに当たる部分のみを残しているのですね。文章はほぼ原文に忠実で、平家物語の素地を損なわないよう、真摯に丁寧に訳されたことが伝わります。
これ一冊を読めば、平家物語を通読できる、と言っても過言ではない、そんなお得な一冊です。
■ 『平家の群像』 髙橋昌明氏(岩波新書)
平家の群像 物語から史実へ (岩波新書)
『平家物語』が文学的虚構を抱えているのに対して、こちらの本は、 当時の史料をもとに、できるだけ史実の姿を顕そうという試みです。 特に維盛、資盛、重衡といった平家の人気の公達については、かなり詳しく迫っておられます。
『平家物語』とはまた違う彼らの真の姿が浮かび上がって面白い。
(私の感想は、「平家物語より、みんな史実の方がかっこいいじゃないか!」でした。)
平家公達ファン必携です。
平家物語の副読本としてオススメの古典は、この二つ。
■『建礼門院右京大夫集』糸賀きみ江氏 訳注(講談社学術文庫)
建礼門院右京大夫集 全訳注 (講談社学術文庫)
高倉天皇の中宮・平徳子に仕えた女房、右京大夫の歌集です。
『平家物語』が、伝聞や伝承をもとに後世に編纂されたものであるのに対し、『右京大夫集』の特筆すべきは、なんといっても一次情報であるということです。
実際に平家の人々と近しい場所で交際していた彼女の言葉は、他のどんな伝聞より重く我々の心に響きます。
『平家物語』では大将軍の彼らも、日常では仕事をし、友と遊び、恋に悩む、我々と同じ一人の人間だったということを思い出させてくれます。
漫画で読むなら、えこぶんこ(当ブログ)をどうぞ!・・・と宣伝。一話はこちらから。
■『平家公達草紙』 櫻井陽子氏・鈴木裕子氏・渡邉裕美子氏(笠間書院)
平家公達草紙: 『平家物語』読者が創った美しき貴公子たちの物語
これまた、面白い本です。
『平家公達草紙』は、鎌倉時代に成立した、平家の公達にまつわるエピソード短編集。
こちらの本には、平家ビギナーにもわかるよう、丁寧な解説と注釈、現代語訳があります。さらには、本文の影印まで!装丁もオシャレで、華やかなカラー刷り。
編纂の先生方の気合いというか、愛を感じます。
ところで、『平家公達草紙』の作者について、かつては同時代人の藤原隆房とされていましたが、現在では、後世の平家読者による二次創作だと指摘されています。
『平家物語』や『建礼門院右京大夫集』を読んで、維盛ステキ!重衡カッコイイ!ってなった鎌倉時代の女子たちが、公式では物足りず、同人誌作っちゃったってことですね。
なんだそれ、友達になれそう。
隆房と維盛が若干BLっぽくなっていたりして、そうかそうか、鎌倉女子もこういうのがお好みか。と思った次第です。
■『最後の御大将 平重衡』中津文彦氏(PHP文庫)
最後の御大将 平重衡 義経が最も恐れた男 (PHP文庫)
すごく面白いのに、残念ながら絶版ですので、図書館か電子書籍で是非!
重衡が主人公なんて、珍しい!
でも、平家の盛衰の全貌を語るのに、これ以上相応しい主人公はいないですよね。
この時代を扱うと、清盛か義経が主人公になることが多いのですが、
清盛は一番盛り上がるところで途中退場してしまいますし、 義経はそもそも、権力の中枢にはいませんので、この時代の全体像が描かれにくい。
その点、重衡は、平家の栄華の絶頂期に渦中にいて、かつ、源平の戦いでは主戦力となり、さらには捕虜となって滅亡を見届けています。重衡の目線で描くことで、この時代の歴史のうねりの全てを平家の中枢から描くことができますね。
無謀にも玉砕するまで源氏と戦い続けたイメージの『平家物語』とは異なり、 この小説では、重衡は、最後まで平家存続の(つまり和平の)道を模索し続けます。 そのため重衡があえて捕虜となったくだりは、鳥肌もののカッコよさです。
この設定は、小説独自のものでしょうか?
当時の史料によれば、平家側が和平も視野に入れていたのは事実のようです。
武勇で聞こえた重衡がみすみす捕虜となって、屋島の平家陣に神器を返還するよう手紙を出したという史実からも、重衡は身を挺してなんとか平家を滅亡から救おうとしたのではないかと思わずにはいられないのです。
■『日本の歴史 源平の戦い』(小学館)
日本の歴史 源平の戦い: 平安時代末期 (小学館版学習まんが―少年少女日本の歴史)
子供向け学習漫画と侮るなかれ。小学館のこのシリーズの内容は、大学入試レベル・・・いやそれ以上だと思います。
すごいのは、内容の詳細さだけではなく、背景の建物や装束にいたるまで徹底的に時代考証されて描かれているところ。
例えば、同じ平安時代でも中期と院政期では微妙に違う装束の差や、座り方に至るまで、細かく描写されています。
只ならぬ信念で編纂された仕事であろうということが伝わりますね。受験生にも、大人にもオススメできます。
ただ・・・維盛は美形じゃなかったですね。
義経は美形なのに。泣。
あっでも、平安時代の美形ってむしろあんな感じか。
次回は再び、「建礼門院右京大夫集あらすじマンガ」です。
平家は西海へ。都には義仲。鎌倉には頼朝。どうなる?平資盛!
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『平家物語』を楽しむためのオススメ本を紹介します!
大の平家ファン・えこぶんこが、ガチで面白いと思った本ばかりを厳選しました。
原文・現代語訳
■『平家物語 全訳注』杉本圭三郎氏 訳注(講談社学術文庫)新版 平家物語(四) 全訳注 (講談社学術文庫)
古文ファンの愛読書、講談社学術文庫です。 底本は覚一本。
図書館で分厚い全集を借りなくても、原文と現代語訳が文庫で通勤時間に読めるなんて、なんと贅沢で有り難いシリーズだろう。
古文にあまり馴染みがないという方にも原文・現代語訳はオススメできます。 なぜなら『平家物語』(覚一本)は、そんなに難解ではないからです。
例えば、平安中期の王朝文学などは、主語がなくて誰がしゃべってるのかわからなくなったりしますが・・・(私はそうなる)
『平家物語』(覚一本)は、ちゃんと主語もセリフもわかるし、ストーリーも明快。キャラがそれぞれ立っていて、現代の小説を読んでいるのと変わらない感覚で、感情移入できます。
数ある『平家物語』諸本のうち、覚一本は、南北朝時代、当時の琵琶法師のトップである明石覚一が弟子たちの為にまとめた本。諸本中、最も文芸的に優れているといわれ、物語として洗練されているので、現代人にも読みやすい本となっています。
とはいえ結構な長さですから、面白そうな巻から読むのもいい手だと思います。
個人的にはやはり、木曽義仲が京に迫ってくる巻七あたりから、平家一門が壇ノ浦に沈む巻十一までが特に緊張感があって面白いと思っています。
序盤は寺院の強訴の話などが続きますので、いわゆる源平合戦を楽しみたい場合は、巻七あたりから読み始めていいと思います(講談社学術文庫では(三)収録)
重衡・維盛ファンにお勧めは、巻十です!(講談社学術文庫では(四)収録)
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■『吉村昭の平家物語』吉村昭氏 訳(講談社文庫)
吉村昭の平家物語 (講談社文庫)
もっと簡潔に現代語訳を読みたい、という方にオススメ。
といってもダイジェスト版ではなく、ほぼ全体が収録されているので、ストーリーがぶつ切りになることはありません。
平家物語には、仏教説話めいた部分や、話が逸れる部分が結構ありますので、それらを徹底的にカットし、主軸のストーリーに当たる部分のみを残しているのですね。文章はほぼ原文に忠実で、平家物語の素地を損なわないよう、真摯に丁寧に訳されたことが伝わります。
これ一冊を読めば、平家物語を通読できる、と言っても過言ではない、そんなお得な一冊です。
新書
平家の群像 物語から史実へ (岩波新書)
『平家物語』が文学的虚構を抱えているのに対して、こちらの本は、 当時の史料をもとに、できるだけ史実の姿を顕そうという試みです。 特に維盛、資盛、重衡といった平家の人気の公達については、かなり詳しく迫っておられます。
『平家物語』とはまた違う彼らの真の姿が浮かび上がって面白い。
(私の感想は、「平家物語より、みんな史実の方がかっこいいじゃないか!」でした。)
平家公達ファン必携です。
古典文学
■『建礼門院右京大夫集』糸賀きみ江氏 訳注(講談社学術文庫)
建礼門院右京大夫集 全訳注 (講談社学術文庫)
高倉天皇の中宮・平徳子に仕えた女房、右京大夫の歌集です。
『平家物語』が、伝聞や伝承をもとに後世に編纂されたものであるのに対し、『右京大夫集』の特筆すべきは、なんといっても一次情報であるということです。
実際に平家の人々と近しい場所で交際していた彼女の言葉は、他のどんな伝聞より重く我々の心に響きます。
『平家物語』では大将軍の彼らも、日常では仕事をし、友と遊び、恋に悩む、我々と同じ一人の人間だったということを思い出させてくれます。
漫画で読むなら、えこぶんこ(当ブログ)をどうぞ!・・・と宣伝。一話はこちらから。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
■『平家公達草紙』 櫻井陽子氏・鈴木裕子氏・渡邉裕美子氏(笠間書院)
平家公達草紙: 『平家物語』読者が創った美しき貴公子たちの物語
これまた、面白い本です。
『平家公達草紙』は、鎌倉時代に成立した、平家の公達にまつわるエピソード短編集。
こちらの本には、平家ビギナーにもわかるよう、丁寧な解説と注釈、現代語訳があります。さらには、本文の影印まで!装丁もオシャレで、華やかなカラー刷り。
編纂の先生方の気合いというか、愛を感じます。
ところで、『平家公達草紙』の作者について、かつては同時代人の藤原隆房とされていましたが、現在では、後世の平家読者による二次創作だと指摘されています。
『平家物語』や『建礼門院右京大夫集』を読んで、維盛ステキ!重衡カッコイイ!ってなった鎌倉時代の女子たちが、公式では物足りず、同人誌作っちゃったってことですね。
なんだそれ、友達になれそう。
隆房と維盛が若干BLっぽくなっていたりして、そうかそうか、鎌倉女子もこういうのがお好みか。と思った次第です。
小説
最後の御大将 平重衡 義経が最も恐れた男 (PHP文庫)
すごく面白いのに、残念ながら絶版ですので、図書館か電子書籍で是非!
重衡が主人公なんて、珍しい!
でも、平家の盛衰の全貌を語るのに、これ以上相応しい主人公はいないですよね。
この時代を扱うと、清盛か義経が主人公になることが多いのですが、
清盛は一番盛り上がるところで途中退場してしまいますし、 義経はそもそも、権力の中枢にはいませんので、この時代の全体像が描かれにくい。
その点、重衡は、平家の栄華の絶頂期に渦中にいて、かつ、源平の戦いでは主戦力となり、さらには捕虜となって滅亡を見届けています。重衡の目線で描くことで、この時代の歴史のうねりの全てを平家の中枢から描くことができますね。
無謀にも玉砕するまで源氏と戦い続けたイメージの『平家物語』とは異なり、 この小説では、重衡は、最後まで平家存続の(つまり和平の)道を模索し続けます。 そのため重衡があえて捕虜となったくだりは、鳥肌もののカッコよさです。
この設定は、小説独自のものでしょうか?
当時の史料によれば、平家側が和平も視野に入れていたのは事実のようです。
武勇で聞こえた重衡がみすみす捕虜となって、屋島の平家陣に神器を返還するよう手紙を出したという史実からも、重衡は身を挺してなんとか平家を滅亡から救おうとしたのではないかと思わずにはいられないのです。
漫画
日本の歴史 源平の戦い: 平安時代末期 (小学館版学習まんが―少年少女日本の歴史)
子供向け学習漫画と侮るなかれ。小学館のこのシリーズの内容は、大学入試レベル・・・いやそれ以上だと思います。
すごいのは、内容の詳細さだけではなく、背景の建物や装束にいたるまで徹底的に時代考証されて描かれているところ。
例えば、同じ平安時代でも中期と院政期では微妙に違う装束の差や、座り方に至るまで、細かく描写されています。
只ならぬ信念で編纂された仕事であろうということが伝わりますね。受験生にも、大人にもオススメできます。
ただ・・・維盛は美形じゃなかったですね。
義経は美形なのに。泣。
あっでも、平安時代の美形ってむしろあんな感じか。
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次回は再び、「建礼門院右京大夫集あらすじマンガ」です。
平家は西海へ。都には義仲。鎌倉には頼朝。どうなる?平資盛!
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