恋なんてしないはずが?平資盛のアプローチ【建礼門院右京大夫集あらすじマンガ】|平家物語

右京大夫が平資盛との恋についてはじめて語る段。右京大夫は、意外にも恋愛否定派だった・・・?
あらすじを漫画でどうぞ。

『建礼門院右京大夫集』<61番詞書>より
平資盛と建礼門院右京大夫、建礼門院右京大夫集
漫画は、原文を基にえこぶんこが脚色しています。

◆解説目次◆ ・登場人物
・プライド高め?バリキャリ女房、右京大夫
・歳の差恋愛って本当?資盛との年齢差

登場人物

平資盛(たいらの すけもり)
平清盛の長男(重盛)の次男。

右京大夫(うきょうのだいぶ)
中宮・徳子に仕える女房。

プライド高め?バリキャリ女房、右京大夫


 61番詞書によれば、右京大夫は自分のことを、「なべての人のようにはあらじ」(世間の普通の女のように、恋愛で悩んだりなどしない)と思っていたらしい。

 なんというか・・・自意識の高さを匂わせる言い方ですね

 それが、 「思ひのほかに物思はしきこと添ひて、さまざま思ひ乱れ(図らずも、恋の悩みが生じてしまって、思い乱れ)るハメになってしまったらしい。

 もともと恋愛に憧れていたわけではないのですね。

 実際、右京大夫は、文芸にも音楽にも優れたハイスペック女子でしたので、それなりにプライドも高かったのだと思われます。



 中宮徳子の代わりに和歌を読んだり、高倉天皇と掛け合いのような和歌のやりとりまでしていますので、かなりエグゼクティブなポジションですよね。

 また、藤原実宗、平宗盛、忠度、重衡、維盛など、たくさんの男性官人と戯れの和歌の贈答をしている様子が、建礼門院右京大夫集から伺えます。
 頭が良くて機転のきく彼女は、かなりモテたんでしょう。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 

そんな彼女が、不覚にも資盛との恋に落ちてしまった理由は・・・

「朝夕、女どちのやうに交じりゐて見かはす人あまたありし中に、とりわけとかく言ひし」(朝夕、女同士のように、仕事で顔を合わせる男性が大勢いた中で、特別言い寄ってきた)のが、資盛だったそうです。
 資盛の方から、積極的にアプローチしたようですね。

 「あるまじのことや」(恋なんて絶対しない)と決めていた彼女でしたが、
「契りとかやは逃れがたく」(前世から定められた運命からは逃れられず)、 結局、恋の道に踏み入ることになってしまったそうです。

 本当に不覚だったのですね。

実際、資盛の恋人になって幸せだったのかと考えると、安易に肯定できないものがありますので、彼女の懸念は当たっていたのかもしません。

 けれども、後に、資盛の壮絶な運命を心に抱え続けることが彼女の生きる意味となり、やがて後世に読み継がれる名作を記すに至ったという点では、やはり資盛は宿命の人だったのだと思います。





歳の差恋愛って本当?右京大夫と平資盛の年齢差

右京大夫と資盛は、よく、年上女性と年下男性のカップルだと言われます。

 実際、何歳離れていたのでしょう。

・・・実は、わかりません。
 右京大夫の生まれ年が不明だからです。(この時代の女子にはよくあることです)

記録がないので、状況証拠から推測するしか無いようです。

 1173年に宮仕えを開始しているから、このとき17、8歳とすれば、1157年生まれとなる。 ただ、この説だと、作中の式子内親王女房との贈答歌が12、3歳頃となり、さすがにそれは無理だろうとのことで、1152〜1155年頃の生まれではないか。

・・・ということらしいです。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 資盛が1161年生まれですから、
 仮に右京大夫が1152年生まれなら、九歳違い
 右京大夫が1157年生まれなら、四歳違い

 確かにちょっと歳上ではあります。


手慣れた男性官人たちと、洗練された和歌の贈答を日常のようにしていた右京大夫にとっては、若くて初々しい資盛の感じがかえって新鮮だったのかもしれませんね。
(妄想ですけど)
 ※資盛は1158年生まれだとする説もあります。ややこしい。






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※参考文献/久保田淳氏『建礼門院右京大夫集・とはずがたり』新編日本古典文学全集(小学館)/糸賀きみ江氏『建礼門院右京大夫集全注釈』(講談社)/梶原正昭氏・山下宏明氏『平家物語』新日本古典文学大系(岩波書店)

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<エピローグ>
■読み継がれる右京大夫集

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