唯一の弱点?!平維盛の恋愛問題 2【建礼門院右京大夫集あらすじマンガ】|平家物語

前回>のつづきです。 平維盛の恋人が悩む姿に、右京大夫がとった行動は・・・

『建礼門院右京大夫集』<187~192番詞書>より
平維盛の和歌、建礼門院右京大夫集平家物語
平維盛の和歌、建礼門院右京大夫集平家物語
平維盛の和歌 建礼門院右京大夫集
漫画は、原文を基にえこぶんこが脚色しています。

◆解説目次◆ ・維盛、唯一の弱点。それは・・・
・右京大夫 V.S. 維盛 和歌対決!

維盛、唯一の弱点。それは・・・


はい、「和歌が苦手」でした。

では、維盛の他のスペックを見てみましょう。
★笛
治承三年二月、東宮誕生百日祝いの席で、自ら申し出て笛を奏している。『玉葉』
中宮の西八条亭行啓にて、笛を奏している。『右京大夫集』

★朗詠
同じく、西八条亭にて、朗詠している。『右京大夫集』

★歌
承安二年正月、高倉天皇の法住寺殿行幸にて、管弦の楽に合わせて付歌を歌う。『玉葉』

★舞
安元二年、法住寺殿にて、後白河院の前で、「青海波」を舞い、絶賛される。『安元御賀記』『右京大夫集』

★作法
承安二年、諸衛府の次官を招いた酒宴で、勧盃役を務め、九条兼実に「年少と雖も作法優美、人々感歓」と絶賛されている。『玉葉』

※参考文献 高橋昌明氏『平家の群像』岩波新書、岩波書店 2009年
 

・・・完璧ですね。(@_@)

まさに歌って踊れる(さらに笛も吹けて礼儀正しい)アイドルです。


そんな彼が、実は、和歌が苦手だった・・・ということが、右京大夫によって明らかにされてしまいました。

彼女は、別の項でも、維盛の和歌下手エピソードを載せています。(95番~98番詞書)

とはいえ、それを咎めるというよりは、微笑ましいような目線で書いている気がするんですよね。ひょっとして、彼女は、「女子たちの憧れ維盛さまの、意外な弱点」をちょっとかわいいなとか思っていたんじゃないだろうか。
(わかります、わかります)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

それにしても、右京大夫の性格がわかるエピソードです。 友達想いで、さらに、男性官人にも物怖じせず、軽口を言い合えるような、勝気で明るい女性だったことがうかがえます。 (ひと世代前の清少納言を彷彿とさせるような・・・)

 現パロすると、こんな感じか。
平維盛と右京大夫



右京大夫 VS. 維盛 和歌対決!


この場面で右京大夫が詠んだ和歌は下の三首です。

〔187番〕
よそにても 契りあはれに 見る人を つらき目見せば いかにうからむ

〔188番〕
立ち帰る なごりこそとは いはずとも 枕もいかに 君を待つらむ

〔189番〕
起きてゆく 人のなごりや をし明けの 月影白し 道芝の露

●現代語訳●
〔187番〕
よそ目にもあなたと深い宿縁があると思われるあの人に、薄情なことをしたら、私もどんなに悲しいでしょう。

〔188番〕
 「あなたがお帰りになる名残が惜しい」と口に出しては言わないけれど、枕もどれほどあなたをお待ちしていることでしょう。

〔189番〕
起きて帰ってゆく人の名残を惜しむのでしょうか。戸を開けて見送ると、夜明けの白い月光に、まるで涙のように道芝の露が輝いています。
うん、たしかにおせっかいだわ。


それに対する、維盛の返歌はこちら。
〔190番〕
わが思ひ 人の心を おしはかり 何とさまざま 君嘆くらむ

〔191番〕
枕にも 人にも心 思ひつけて なごりよ何と 君ぞいひなす

〔192番〕
明け方の 月をたもとに 宿しつつ 帰さの袖は 我ぞ露けき

●現代語訳●
〔190番〕
私がどう思っているのか、あの人がどう思っているのかを勝手に推し量って、何だといってあなたは、あれこれとお嘆きになるのでしょう。

〔191番〕
枕にも、あの人にも、勝手に自分の思った考えを押し付けて、名残が惜しいのなんのと、さもまことしやかにあなたはおっしゃるのですね。

〔192番〕
明け方の月の光を、袂に置いた涙に映しながら帰る後朝の袖は、見送るあの人の袖よりわたしのほうこそ濡れているのですよ。

右京大夫の和歌を踏まえて、抵抗を試みていますね。

即興でこんなの詠めたら充分すごくね?!

と現代人としては思いますね。

※和歌原文は『新編日本古典文学全集』(小学館)より抜粋。 



平維盛の和歌、建礼門院右京大夫集、平家物語




建礼門院右京大夫集 全訳注 (講談社学術文庫)




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※参考文献/久保田淳氏『建礼門院右京大夫集・とはずがたり』新編日本古典文学全集、小学館/糸賀きみ江氏『建礼門院右京大夫集全注釈』講談社/梶原正昭氏・山下宏明氏『平家物語』新日本古典文学大系、岩波書店

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