北山の思い出【建礼門院右京大夫集あらすじマンガ】|資盛の箏

時は過ぎ、資盛との思い出の場所を訪れる右京大夫。庭の様子はすっかり様変わりしてしまっていましたが・・・。

あらすじを漫画でどうぞ。
『建礼門院右京大夫集』<234歌詞書>より


漫画は、原文を基にえこぶんこが脚色しています。

◆解説目次◆ ・登場人物
・花もその世のことな忘れそ
・資盛のもう一つの顔、箏の奏者

登場人物

右京大夫(うきょうのだいぶ)
平徳子(建礼門院)に仕えていた女房。現在は退職。

平資盛(たいらのすけもり)
清盛の長男[重盛]の次男。右京大夫の恋人。

花もその世のことな忘れそ

かつて資盛の所有地だった場所を訪れた右京大夫。
荒廃した庭と、それでも変わらず咲き続ける桜と。景色とともに、右京大夫の心情が語られる美しい章段です。

236 植ゑて見し 人はかれぬる あとになほ 残る梢を 見るも露けし

植えた人(資盛)はいなくなってしまったのに、依然として残っている木々の梢を見るにつけても涙に誘われる

237 わが身もし 春まであらば尋ね見む 花もその世の ことな忘れそ

わたしがもし、来年の春まで生きていたならば、また訪ねて来て見よう。花も、昔あの人と過ごしたときのことを忘れないでいて

人の営みは変わっていくけれど、樹木は変わらず、毎年そこで花を咲かせる・・・
この感慨は、いつの時代も同じですね。

有名な菅原道真の「東風吹かば にほひをこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ(春を忘るな)」にも通じます。

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ところで、資盛のこの庭には、
「柳桜の同じ丈なるを交ぜて、あまた植ゑ並べ」
(柳と桜の同じ高さのものを交ぜて、たくさん並べて植えてあった)そうです。

柳と桜のコントラストが、なんともオシャレな庭ですね。

「見渡せば 柳桜をこきまぜて 都ぞ春の 錦なりける」(素性法師・古今集)という和歌もあるように、柳と桜を同時に愛でる、ということは割とメジャーだったのかもしれませんね。

以前の梅を愛でていたエピソード(211歌詞書)といい、資盛はとても風流な人だったことが伺えます。


資盛のもう一つの顔、箏の名人


右京大夫集には描かれていないのですが、資盛と右京大夫の共通点として、「箏」の奏者であったことが挙げられます。

前述のように、右京大夫の母は、箏の名手・夕霧。右京大夫自身も、箏を得意としていました。
一方資盛は、藤原師長に師事しており、朝廷の行事でも箏を奏していた記録があります。

治承二年正月四日の朝覲行幸では、兄・維盛が笛を、資盛が箏を担当しています。(『玉葉』)

維盛と資盛で、笛と箏のセッション?!
めちゃくちゃ聴きたいですね!!

右京大夫集に、箏の奏者としての資盛の描写はありませんが、きっと二人で箏を合わせて楽しんだりしていたことだと思います。

こうしてみると、資盛もお兄さん(維盛)に引けを取らない、ハイスペックな公達だったんですね。

平資盛の筝 平維盛の笛 藤原実宗の琵琶
※『玉葉』治承二年正月四日条 (『玉葉』国書刊行会より)

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※参考文献/『玉葉』国書刊行会/『平家物語』新日本古典文学大系、岩波書店/『平家物語図典』小学館/久保田淳氏校注『建礼門院右京大夫集・とはずがたり』新編日本古典文学全集、小学館/川合康氏『源平の内乱と公武政権』吉川弘文館/高橋昌明氏『平家の群像』岩波新書

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<プロローグ>
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<これが平家の公達だ!編>
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■どういうつもり!藤原隆信の横恋慕 1
■右京大夫、宮仕えやめるってよ
■わたしは何なの?隆信の結婚
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<平家滅亡編>
■遠くに聞くだけ。資盛の熊野詣
■資盛との再会■枯れたる花
■寿永二年■倶利伽羅峠の惨敗!
■平家都落■資盛、最後の願い
■資盛と右京大夫、今生の別れ!
■六波羅と西八条■大宰府落ち
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■梅の花と資盛■一の谷の合戦
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■資盛からの最後の便り!
■壇ノ浦の戦い! ■壇ノ浦の戦後処理

<追憶の旅編>
■北山の思い出
■大原へ。建礼門院を訪ねて 1
■右京大夫、旅に出る
■比叡坂本、雪の朝の思い出
■波の底の資盛に■星合の空

<再出仕編>
■後鳥羽天皇に仕える
■宮中で資盛の名を聞く
■藤原隆房、藤原公経との贈答
■藤原俊成九十の賀に

<エピローグ>
■読み継がれる右京大夫集

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