右京大夫、宮仕えやめるってよ。【建礼門院右京大夫集あらすじマンガ】|平家物語

ますます調子に乗って、右京大夫を口説きにかかる藤原隆信!そんな中、右京大夫がついに宮仕えを辞める・・・?

あらすじを漫画でどうぞ。
『建礼門院右京大夫集』<144番詞書>+α
漫画は、原文を基にえこぶんこが脚色。今回の和歌以外は想像で描いています。


◆解説目次◆ ・登場人物
・右京大夫が宮仕えを辞めたわけ
・実は誰だかわからない!?隆信なのか、資盛なのか

登場人物

藤原隆信(ふじわらのたかのぶ)
歌人。似絵の名手。

平資盛(たいらのすけもり)
清盛の長男〔重盛〕の次男。右京大夫の恋人。

右京大夫(うきょうのだいぶ)
中宮・徳子に仕える女房。

右京大夫が宮仕えを辞めたわけ


宮仕えを辞めたことは、右京大夫にとっては、大きな転機だったはずです。
でも実は、右京大夫集には、宮仕えを辞めた時期や理由については書かれていません。
(上記の漫画の和歌以外は想像で描いています。すみません・・・)

ただ、時期は推測することができます。

治承二年(1178)11月、中宮徳子が言仁親王(後の安徳天皇)を産んだことを、右京大夫は「雲のよそ」(宮廷の外)(126番)に聞いていたと記しています。
なので、それ以前にはもう、宮中を退下していたことがわかっています。

理由については、母の看病の為であったとか、恋愛問題で宮中に居づらくなったとか言われていますが、結局は想像するしかありません。
その全部だったかもしれませんね。


右京大夫は、「心ならず宮に参らずなりにし」(不本意にも中宮様にお仕えしなくなった)(124番詞書)と書いているので、本当は辞めたくなかったのでしょう。

確かに彼女ほどの才媛が、その才能を活かす場を失うのは勿体ないですよね。

(ただ、なんの因果か、右京大夫はこれから十五年ほど経ってから、再び宮仕えをすることになります。平家が一掃されたあとの、後鳥羽天皇の施政下です)




実は誰だか、わからない?!隆信なのか、資盛なのか。

右京大夫集には、恋人としての資盛の名前は出てこないという話は、以前の記事に書きましたが、

実は、隆信の名前も出てきません。(えっ?)

初登場のとき「世人よりも色好むと聞く人」(世間一般の人より色好みだという噂の人)という言い方で登場して以来、(どういう登場の仕方だ・・・)
「同じ人」「人」としか書かれていないのです。

しかも右京大夫が、資盛と隆信、それぞれと交際していた時期は重なっていますので、実は相手がどっちかわからない話がいくつかあります。(・・・オイ)


幸い(?)隆信の方も歌人で、私家集「隆信朝臣集」を遺しているので、そこに同じ和歌が収録されている場合は、相手が隆信だとわかります。

そうでない和歌については、状況や前後の文脈から想像するしかないようです。
なので、研究者の先生によって、隆信か資盛かで意見が分かれる和歌もあります。

もしかして、これを現代ではフタマタというのだろうか・・・。

でも、右京大夫は二人の正式な妻でもなければ、彼らも彼女を妻にするつもりはないですからね。実際、結構ぞんざいな扱いを受けていますし。別に責められないと思います。
(資盛の正妻については、後日、別の項でツッコミます。)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ところで、右京大夫が隆信の名をぼかしたのは、なぜでしょう?

新編全集(小学館)解説によれば、『右京大夫集』が、藤原定家(隆信の異父弟)に提出されたことと無関係ではないであろう、としています。

どちらかといえば、「悪い男」枠での登場ですもんね、隆信さん。一応、右京大夫も遠慮したということでしょうか。
宮仕えを退いた右京大夫ですが、隆信との関係は、まだまだ・・・というか、ますます続きます。次回に続きます。




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※参考文献/久保田淳氏校注『建礼門院右京大夫集・とはずがたり』新編日本古典文学全集、小学館/糸賀きみ江氏校注『建礼門院右京大夫集全注釈』講談社/梶原正昭氏・山下宏明氏校注『平家物語』新日本古典文学大系、岩波書店

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