星合の空に【建礼門院右京大夫あらすじマンガ】
七夕の夜、星を見上げる右京大夫は・・・。
右京大夫(うきょうのだいぶ)
平徳子(建礼門院)に仕えていた女房。
平資盛(たいらのすけもり)
清盛の長男[重盛]の次男。右京大夫の恋人。
右京大夫の異名をご存じでしょうか。それは、「星夜賛美の歌人」。
右京大夫の七夕の歌には、とても素敵な歌がいっぱいあるので、いくつかご紹介します。
登場人物
平徳子(建礼門院)に仕えていた女房。
平資盛(たいらのすけもり)
清盛の長男[重盛]の次男。右京大夫の恋人。
五十一首の七夕の歌
右京大夫集には、星月夜を美しく描いた章段があり、(252歌詞書)右京大夫といえば、星のイメージなのですね。
そして、右京大夫集でなによりも目を引くのは、五十一首におよぶ七夕の歌たちです。
当時、七夕の夜には、七首の歌を七枚の梶の葉に歌を書き、星に備える風習がありました。
右京大夫は、そうした歌たちをまとめて、右京大夫集に収録しています。
これらがちょうど、宮中に再出仕する話の直前に配置されています。
歌集としては、ここで気分転換をはかっているかのようですね。
現実逃避の旅も終わり。
右京大夫は、平家のいなくなった宮中に再び身を置くことになるのです。
知らばや告げよ 天の彦星
276歌
さまざまに 思ひやりつつ よそながら ながめかねぬる 星合の空
●現代語訳●
いろいろと想像しながら空を眺めていると、ひとごととは思えなくなった星合の空
さまざまに 思ひやりつつ よそながら ながめかねぬる 星合の空
●現代語訳●
いろいろと想像しながら空を眺めていると、ひとごととは思えなくなった星合の空
資盛との恋がはじまったあたりでしょうか。
恋のドキドキが伝わるかわいい歌ですね。
293歌
なにごとも 変りはてぬる 世の中に 契りたがはぬ 星合の空
●現代語訳●
何事もすっかりかわってしまった世の中で、年に一度の星合の約束だけは変わらない七夕の空よ。
なにごとも 変りはてぬる 世の中に 契りたがはぬ 星合の空
●現代語訳●
何事もすっかりかわってしまった世の中で、年に一度の星合の約束だけは変わらない七夕の空よ。
平家滅亡の激動を経ての歌。世の中も、自分の境遇もすっかり変わってしまったのに、そんなことに関係なく、今年も星は空に輝くのです。
303歌
七夕の 契りなげきし 身のはては 逢ふ瀬をよそに 聞きわたりつつ
●現代語訳●
たまにしか会えない七夕の契りに同情していた自分は、とうとう、年に一度の逢瀬すらなくなって、よそごとに聞くだけになってしまった。
七夕の 契りなげきし 身のはては 逢ふ瀬をよそに 聞きわたりつつ
●現代語訳●
たまにしか会えない七夕の契りに同情していた自分は、とうとう、年に一度の逢瀬すらなくなって、よそごとに聞くだけになってしまった。
317歌
嘆きても 逢ふ瀬を頼む 天の河 このわたりこそ かなしかりけれ
●現代語訳●
星たちは嘆いても、天の河での逢瀬をあてにすることはできるけれど、わたしとあの方の間の渡りにはそのような希望もないのが悲しい。
嘆きても 逢ふ瀬を頼む 天の河 このわたりこそ かなしかりけれ
●現代語訳●
星たちは嘆いても、天の河での逢瀬をあてにすることはできるけれど、わたしとあの方の間の渡りにはそのような希望もないのが悲しい。
漫画でとりあげた歌です。
資盛とこの世で二度と逢うことができない右京大夫は、一年に一回は会える織女と彦星よりも悲しい境遇なのです。
322歌
いつまでか 七つの歌を 書きつけむ 知らばや告げよ 天の彦星
●現代語訳●
いったいいつまで私は、七夕に七首の歌を書き付けるのでしょうか。知っていたら教えてください。天の彦星よ。
いつまでか 七つの歌を 書きつけむ 知らばや告げよ 天の彦星
●現代語訳●
いったいいつまで私は、七夕に七首の歌を書き付けるのでしょうか。知っていたら教えてください。天の彦星よ。
毎年毎年、七夕が来るたびに、こう思ったんでしょうね。
資盛はもういない。何の為に生きているのかわからなくても、それでも月日は淡々と過ぎていくのです。
いいんですよ、右京大夫!
あなたは生きてください!!
そして、お父上から受け継いだ文才で、あなたが見聞きした平家の方々のご様子を、後世に書き残してください!
・・・って、訴えかけたくなります。
現代の我々が、重衡・維盛・資盛のかっこいいエピソードを知ることができるのは、右京大夫先生のおかげなんですもの。