室町時代版「平家・美男子キャラクターブック」!?『平家花揃』がおもしろい!|平家物語

今回はコラムです。

平家滅亡編の前に、平家の公達をおさらいしておきましょう。っということで、今回は、室町時代の『平家花揃』という古典作品を紹介します!

『平家花揃』(へいけはなぞろへ)は、、平家物語の主要人物たちを花に例えて、和歌や賛辞を添えた『平家公達カタログ』のような古典作品です。

作者は不明ですが、室町時代の連歌師の手によるという説があります。

おなじみの平家メンバーは、何の花に例えられているのか?
では、さっそくどうぞ。

◆目次◆ ・平家の花と言えば!【小松家7兄弟】
・清盛の息子たちは何の花?
・その他一気にいきますよ。
・今も昔も・・・

平家の花と言えば!【小松家7兄弟】

平家の花と言えば、そう、この一族。

■【長男】平維盛 たいらのこれもり

樺桜
春の曙、かすかに月が残って山際が白む中、あたりまで香る樺桜。のイメージだそうです。
平家花揃 平維盛

『平家花揃』【原文】より

三位中将維盛
これこそまことに、花とてもけに一かたによそへにくきまてありかたくうつくしき人なれ。(中略)ふえのねなともすくれ、一とせの御かにせいがいはをまひ給ひしおりなとは、まことにてんにかかやき、地をてらし給ひしそかし。

「めったにない美しい人」で、笛にも優れ、青海波を舞ったときの姿は、天に輝き、地を照らすほど
(・・・もう青海波の話は、レジェンドですね)

うーん、さすが、平家のビジュアル担当。(どんだけ)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

■【次男】平資盛 たいらのすけもり


村雨が一叢すぎて、夕方の太陽がほのかに照り、浅緑のなかに藤の紫色があざやかに映える
平家花揃 平資盛

『平家花揃』【原文】より

新三位中将資盛
このかみのあまりにまはゆきまてなるにやおとるともきこへん、なへてのきはにはこれもきこゆへくもなくなまめかしく、きよけにこそ見え給へ。

お兄さん(維盛)があまりにまばゆいくらい美しいのに比べて、決して劣らない。若々しくて爽やかだそうです。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
■【三男】平清経 たいらのきよつね

尾花(すすきの花)
虫の音が鳴き、叢の露は白く、肌寒い風が吹いて、尾花の穂がなびく様子。
平清経 平家花揃

『平家花揃』【原文】より

左中将清経
このかみたちのやうに、ふち、さくらなとのにほひおほきかたはなけれと、そこはかとなくあさやかになまめかしく、人のこころそめつへきさまそし給へる。

兄たちのように、藤・桜などのような華やかさはないけれど、そこはかとなく美しく若々しく、人の心に気に入るような様子でいらっしゃる。とのこと。

清経は、資盛のすぐ下の弟です。
 (が、清経の方が正妻腹なので、出世競争ではライバルでした。)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

この兄弟で、
維盛=春、資盛=初夏、清経=秋、のイメージになっていますね。

小松家7兄弟、残り4人は、
■【四男】平有盛・・・からさうひ(唐薔薇?)
■【五男】平師盛・・・ほうつき(法月?)
■【六男】平忠房・・・忘れ草(萱草)
■【七男】平宗実・・・梨花





平家の主役!清盛の息子たちは何の花?

「平家物語」の主役で苦労人!清盛の息子たちは、何の花に例えられているのでしょう。重衡からいきます。
(なんでかって、絵になるから^^;)


■【五男】平重衡 たいらのしげひら

牡丹
牡丹の花が咲き乱れる朝ぼらけに、初ほととぎすの声が聞こえてきたようなイメージだそうです。
平家花揃 平重衡

『平家花揃』【原文】より

本三位中将重衡
ことさら人のためおもひやりふかく、こころさまなつかしくなさけしくもてなし、みめもれゐの人もとゆかりにや、いとよくて、(略)

そしてまた、容姿だけでなく、人柄をほめられる重衡さん。
思いやりが深くて、人のこころをくみ取ってもてなし・・・」

いいことしか言われねえな、この人!
(ま、この文章、そもそも元ネタが『右京大夫集』のような気もするが・・・)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

清盛の息子たち 他はこんな感じ。

■【長男】平重盛 ・・・梅
■【三男】平宗盛 ・・・白菊
■【四男】平知盛 ・・・紅葉
■【六男】平知度 ・・・しろつつじ


※ちなみに、清盛の次男・基盛(重盛の同母弟)は早世しています。「平家物語」関連の古典では宗盛が次男と表記されることもありますが、ここは史実どおりに表記しました。






そのほか、一気に行きますよ。

■平清盛 ・・・桐竹に鳳凰 
■平教盛 ・・・榊
■平経盛 ・・・枯野のすすき
■平忠度 ・・・蘆のうちなびく景色

■平経正 ・・・雪の朝の庭
■平敦盛 ・・・ふゆ梅のつぼみ

■平通盛 ・・・あやめ
■平教経 ・・・はちすの花(蓮)

まだまだ他に藤原さんや女性陣の記載もあるのですが、今回はこの辺で。


今も昔も・・・


いやぁ、面白い作品ですね。

『平家公達草紙』が、平家物語の同人誌だとしたら、
『平家花揃』は、キャラクターブック、ファンブックのようなものでしょうか。
平家物語の副読本として親しまれたようです。

今も昔も、公式だけでは飽き足らない、想像力豊かな読者はいたということですね。ああ楽しい。

※『平家花揃』の原文は、松尾葦江氏『平家物語論究』(付 慶応義塾図書館蔵『平家花ぞろへ』翻刻)明治書院 より抜粋させていただきました。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

次回は、再び、「建礼門院右京大夫集あらすじ漫画」です。
お話はいよいよ、平家滅亡へ。右京大夫と資盛は会えるのか。お楽しみに。



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※参考文献/久保田淳氏『建礼門院右京大夫集・とはずがたり』新編日本古典文学全集、小学館/糸賀きみ江氏『建礼門院右京大夫集全注釈』講談社/梶原正昭氏・山下宏明氏『平家物語』新日本古典文学大系、岩波書店

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